承証寺住職で精神対話士の水野さん。
境内にある和室が相談会場になる=金沢市寺町5丁目
悩める人よ、寺で語れ――。
金沢市寺町5丁目の承証寺(じょうしょうじ)で
7日から、心のケアの専門家「精神対話士」の資格を持つ
住職の水野禎源(ていげん)さん(38)らが無料相談会を開く。
檀家(だんか)回りをきっかけに、相手の話に耳を傾け、
不安を受け止める精神対話士の活動に出会った水野さん。
県の自殺防止対策事業にも認定された相談会に、
「ひたすら話を聞いてうなずき、
孤独感や無力感から救いたい」
との思いを込める。
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財団法人「メンタルケア協会」(本部・東京)が認定する
精神対話士の資格を水野さんが取ったのは2008年。
檀家を月に1度訪ね、お経をあげる「月参り」での体験が
きっかけだった。
お経をあげた後、檀家のお年寄りと会話を交わす。
思い出話に孫の自慢話、健康の悩み……。
時に1時間も続くおしゃべりの後、
皆の表情が明るくなることに気付いた。
サラリーマン家庭に育ち、叔父の寺を継いだ水野さんは
「僧侶は説教が仕事」
と固く考えがちだったが、この経験から
「話を聞くことも大切」
と身にしみ、“聞き役”の勉強を始めることにした。
その頃インターネットで、精神対話士の存在を知った。
大阪教育大付属池田小学校の児童殺傷事件(01年)で
娘を亡くした本郷由美子さんも取得した資格で、
対話を通じて相手を受け入れ、痛みに寄り添う
という趣旨に共感した水野さんも受講を申し込んだ。
資格を取ると、県内の別の精神対話士から
「一緒に活動しないか」
と声がかかり、県内には水野さん以外に
7人の仲間がいることを知った。
20~50代の男女で、職業も主婦や保育士など
様々な対話士たちはそれまで単独の活動が中心だったが、
「一緒にやろう」
と意気投合。
相談会の趣旨が、自殺を防ぐ取り組みへの
県の補助事業に認められたことも追い風になった。
今年2月と3月に計3日、初の無料相談会を開催。
場所を承証寺にしたところ、口コミで数人が相談に訪れた。
家庭や仕事の人間関係など、
様々な悩みを抱える相談者のなかには
「(寺の雰囲気が)落ち着きますね」
と心を和ませる人もいたという。
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水野さんのもうひとつの願いは、
現代人の「寺離れ」を食い止めること。
信仰心のあつい石川でも
「共働きで家を空け、月参りをやめる家庭が増えてきた」。
寺が人々の暮らしから、徐々に遠くなりつつある
と感じるという。
そんな現状を変えるきっかけにもしたいと、
11月まで毎月第1土曜日に開く相談会では、
子育てや介護など生活に密着した相談も受けつける。
水野さんは
「1人で抱え込まず、打ち明けて心を軽くしてほしい」
と呼びかけている。
相談会は午後1~5時(受付4時まで)、予約不要。
相談は1対1で行う。
問い合わせは同協会北陸事務所(080・1951・9336)
へ。(山岸 玲)
朝日新聞 2010年(平成22)08月04日(水)